日本政策金融公庫の創業融資面談を有利に進めるために準備すべきこと
日本政策金融公庫の創業融資は、これから創業しようとするあなたのための融資です。
そのため他の金融機関に比べて融資が通りやすく、借りやすいのが特徴と言われています。
しかしなんの対策もせずに融資面談に臨んでしまうと、不適合とみなされて融資の許可が下りないこともあるようです。
融資面談を成功させあなたのビジネスを予定どおり開始するために、創業融資面談の前にしっかりと準備を行いましょう。
1.融資面談ではあなたの経営者としての素質を試されている
そもそも融資面談とは、なんのためにあるのでしょうか?それはもちろん、お金を返済できる人物かどうかの見極めもあるでしょうが、最も大切なことは「経営者たる人物かどうか」です。
日本政策金融公庫は日本政府直轄の金融機関です。
その目的のひとつは「日本経済成長・発展への貢献」。
つまりあなたに融資することが、日本経済の成長発展につながるかどうかを見られているのです。
2.面談前の準備
日本政策金融公庫が面談時に重視していることは、「資料」と「態度」です。
この2点を重点的に押さえておくことで、融資面談を有利に進められます。
【主な資料】
融資面談に必要となる代表的な資料は以下のとおりです。
融資面談以降に提出することもできますが、融資決定までの時間が伸びてしまうため、必要と思われる書類はできるだけ持参することをお勧めします。
①事業計画書・創業計画書
事業計画書および創業計画書は、根拠を明確にし現実可能な内容とすることを意識してください。
なかでも重要とされるのは
・創業に必要な資金額とその調達方法
・事業の見通し
の2点です。
創業に必要な資金額については、物件の賃料や契約費用、内装費用の見積書、備品の見積書などから計算してください。
間違っても「たぶん○百万円」などとせず、必要な金額を洗い出して計算しましょう。
資金の調達方法についても嘘偽りなく記載してください。
自分で貯めたお金・親族などからもらったお金・日本政策金融公庫から借りる予定のお金などに分けて書きましょう。
事業の見通しとは、経営計画が継続可能かどうかです。
客単価やライバル企業の調査などを元に、資金繰りに無理のない計画を立てることが必須です。
創業すぐは知名度もないため、予想していたほどの売上が上がりません。
少なくとも軌道に乗る数ヶ月〜1年程度のあいだは売上を少なめに見積もっておきましょう。
軌道に乗るまでの間も持ちこたえられるような事業計画を立ててください。
②源泉徴収票
源泉徴収票とは、年末調整が終わった後に会社から受け取る、年間の所得金額などが掲載されている用紙のことです。
退職時にも必ず受け取ってください。
③物件の契約書または予定物件の説明書
新規物件を必要とする事業を興すなら、物件の契約書や説明書を添付してください。
店舗の場所を記した地図もあると説明に使えて便利です。
④資格免許
調理師免許のような、創業に必要な免許類です。
⑤引き落とし記録がわかる通帳
家賃や光熱費の引き落としがなされている通帳です。滞納履歴がないかどうかをチェックされます。
税金や水道代、クレジットカード代金など毎月引き落としされるお金が滞納されていると、「返済能力なし」として融資通過は絶望的となります。
少なくとも融資を受けるまえ半年間は滞納なく支払うようにしてください。
⑥自己資金がわかる通帳
創業にあたり投入する自己資金がわかる通帳も用意してください。
自己資金は毎月コツコツ貯めたお金が最も評価されますが、退職金や親族からもらったお金も自己資金とみなされます。
一方「借りたお金」は自己資金とはなりません。
他の金融機関や親族知人から借りたお金、見せ金などがそれに当たります。
なお自己資金がないと融資が受けられないからと、見せ金を用意するのはお勧めしません。
見せ金はすぐに見破られ、マイナス評価につながります。
3.心構え
①日本政策金融公庫の面談担当者は敵ではない
日本政策金融公庫は創業者にお金を貸し出すことで、利息を得たいと考えています。
つまり「あなたにお金を貸したい」のです。
ただし、融資をしても返済されなければ無意味ですよね。
そこで面談を行い、持続可能な経営計画があり返済能力に長けているかを見定められます。
当然面談担当者からの質問は事業計画やあなた自身に対するものとなり、回答者からすると質問内容が刺々しいと感じることもあるでしょう。
しかしぜひ冷静でいてください。根底では面談担当者はあなたに融資がしたいのです。
②質問に対する回答を準備しておく
日本政策金融公庫からの質問は人により変わるものですが、大まかな内容はそれほど変化しません。
ここでは主な質問事項とその意図をいくつかご紹介します。
ぜひ面談前に回答を作成しておいてください。
(ア) 創業の動機
創業しようと決めた時期や理由から、事業にかける情熱や意気込みを確認するためです。
例えば学生時代からカフェを開くのが夢で、その年からコツコツと開業資金を貯めてきた実績があれば納得感が高まります。
(イ) 創業前の経歴
創業する事業について知識や経験があるのかを確かめるためです。
創業する事業と同業種の経歴があれば有利です。
全国チェーンのカフェでマネジャーとして働いてきた経歴があり、そのスキルを活かしてカフェをオープンするとすれば事業を継続できる可能性が高いと判断されやすいでしょう。
(ウ) 事業のキャッシュフロー
キャッシュフローとは、お金の出入りのことをいいます。
仕入れ、売上、支払いなどのお金の流れを確認し、無理のない事業計画かどうかや融資可能額などを判断します。
たとえばカフェであれば、コーヒー豆を仕入れ、豆代に50%の利益を乗せて販売、売上金をアルバイトへの支払いや賃料の支払いに充てる、といったものです。
(エ) 自己資金の出所
原則的に創業融資はいくらかの自己資金がなければ受けられません。原則的に自己資金はその出所がはっきりしているものに限られます。
給与からの積立や退職金などです。
借りたお金やお金の出所が第三者に分からないものは自己資金と認められません。
(オ) 税金や公共料金の支払い
普段から引き落としにしており、滞納がなければ問題ありません。
しかし支払いが遅れていたり滞納していたりすると、融資は受けられないと考えてください。
支払いが遅れる、または滞納しているということは支払い能力が欠如しているということを表しています。
融資をしても返済される可能性が極端に低いわけですから、面談担当者は融資を控えざるを得ないでしょう。
融資面談までに支払いを綺麗に精算しておきましょう。
4.面談時のポイント
①清潔感のある服装で
必ずしもスーツを着る必要はありませんが、清潔感のある服装をお勧めします。
汚れた作業着は真面目に仕事をしてきた証拠だとも取れますが、同じ仕事をしてこないとそこまで考えが回らないものです。
なお色は白が最もお勧めです。白は顔を照らし、明るい印象を与えてくれます。
メラビアンの法則によると、相手に与える情報の55%が視覚情報と言われています。
つまり白などの明るい色の清潔な服装をするだけで、そうでない人よりも好印象を与えられるのです。
②堂々と答える
日本政策金融公庫が融資をしてくれるからといって卑屈になる必要はありません。
むしろ経営者として堂々と答えてください。
うつむいていたり、担当者の目を見ないで話したりするのはマイナスの印象を与えます。
事業計画に自信を持ち、堂々としていてください。
③結論から答える
面談時間は30分前後です。それほど長くはありません。
その間にあなたの事業を説明し、複数の質問に回答しなければなりません。
つまり1つの質問に対して答えられる時間は長くて1分程度でしょう。
担当者に正確にあなたの事業を伝えるために、ムダなことは極力省き結論から答えることを意識してください。
④あやふやな回答は避ける
「たぶん○です」「○だと思います」よりも、できる限り「□です」と言い切りましょう。
あやふやな回答は「あまり深く考えられていないのでは」と思われかねません。
もちろん回答しにくい質問もされるかもしれません。その際は「後ほど回答します」として、面談後に調査して回答しましょう。
5.面談時に言ってはいけないワード集
①「いくら借りられますか?」
融資を受ける際には、何にいくら必要なのかを明確にして「あとこれだけ足りないので貸してください」と融資希望額を伝えます。
つまり前もって融資してもらいたい金額が決まっていないとおかしいのです。
そこへ「いくら借りられるか」と質問するのは「本当は融資の使い道が決まっていないのでは?」と疑われて融資がなされない可能性が高まります。
融資可能額が気になるのはよく分かりますが、担当者に質問をするのはやめておきましょう。
②「根拠はありません」
「売上の根拠は?」「アルバイトはこの人数で回せるのですか?」など聞かれた際に、「根拠はありませんが、おそらくこれくらいだと思います」などと回答するのは良くありません。
根拠がないということは、計画通りの売上と支払い額にならないだろうと判断されてしまいます。
特に売上の根拠は大切な指標です。
ライバル企業の客単価や回転数、人通りなどを調査して根拠を説明できるようにしておいてください。